2007年12月10日

木建いろいろ

0617
ブログ更新の間が少し空きましたが、その分今回はガッツリと密度の濃い内容で<硝子工事>・<隠し框>と続いた開口部シリーズ第三弾をお送りします・・・って、いつのまシリーズに。(^^)
第三弾は木製建具の話いろいろです。

広く木製建具という場合、木製サッシや木質系(半)既製品のドアや引戸も含まれますが、ここでお話しするのは現場で通称「木建」と呼ばれる造作木製建具・・・現場ごとに都度、無垢板や化粧合板で造る建具のお話です。

奥天神の家 玄関<隠し框>の記事で書いたように、機能面やコスト面を考えると窓に木建はなかなか使いづらいかなぁ、と思っている私ですが、玄関ドアや室内の扉・引戸はやっぱり木建じゃないとね、というのがうちの建築デザインの基本スタンスです。
特に玄関は疲れて帰る家族を迎え入れ、また訪ねてきてくださるお客が最初に目にする場。
そんな場所にあるドアは、やっぱり温かな表情を持った無垢の木の建具に限る、と考えています。

左写真は<奥天神の家 I>の玄関ドア・・・米杉材の無垢板に木材保護塗料を塗ったものです。
玄関ドアに使う板材は、現場打合せの中で建具屋さんがその時点で在庫として持っている乾燥した板材の中から(予算も考えながら)選ぶという場合がほとんどですが、やはり後々のソリや変形をを考えると針葉樹を採用する事が多く、とりわけ米杉(Western red cedar ネズコ属)や米ひば(Yellow ceder ヒノキ科)で造る事が多い昨今です。

また周りの外壁が杉板張などの場合には、玄関ドアも同材として杉材で仕立てる事も多く、そんな例が下写真の<苦楽園の家>。
当初は色も外壁と同じキシラデコールのエボニー色にしようと考えていましたが、工事が進む中でそれではちょっと埋没しすぎるようにも感じたので最終的には住まい手と相談して色を変え、アプローチにほのかな「彩」を与えてみました。
そしてここではドア枠にも一工夫・・・アプローチの軒天井と玄関内の天井高の微妙な違いを生かして上枠に設けた24時間換気のための吸気口です。
右下の写真だけでは少し分かりづらいかもしれませんが、上枠は鴨居のように天井から離れていて枠外に張ったパンチングメタルの穴から空気が通うように設えています。

苦楽園の家 玄関

2003年の建築基準法改正でシックハウス対策のための24時間換気が義務付けられ、換気扇による強制排気だけでなく居室内の空気が効率良く換気できるように吸気口も設けなければならなくなりましたが、この吸気口の位置がなかなかヤッカイ。
例えば寝室などになんの考えもなく設けてしままうと、冬場、冷たい外気が流入してきて「うっ、なんだか足元が冷える」なんて事になってしまいます。対策としては熱交換型給排気扇を採用するなどいくつか対処の仕方はありますが、まずはそんな設備機器に頼るよりも、寝室や居室からの排気を心掛け、吸気口はできるだけ人の居場所から離れた玄関などに設けるように計画するのが基本。
でもせっかくのエントランス空間に吸気口然とした物を設けるのも粋じゃない・・・そう考えて一工夫したのがこの換気ドア枠です。

ドアと換気の絡みで言うと、よくご要望もいただくのが勝手口の換気。
特に厨房に接して勝手口を計画する場合には、やはり夏場の調理は暑さとの戦いになる事もあって、そんなご要望をよくいただきます。
そんな需要を見越してアルミサッシにも換気用上下窓つきの勝手口ドアやアコーデオン状の網戸なんていうのもありますが、どちらにしろ機能面はいざ知らずデザイン面ではできるなら採用したくないブツ。
なので、いままでもドア横に換気用の小窓を別に設けるなどの工夫をしたりしてきましたが、ここ最近よく使うようになったのが勝手口ドアの内側に網戸の引戸を設けるという手法です。
下写真は<奥天神の家 I>ですが、左側の奥に写っているスリットを切って外部側に防虫網を張ったシナベニヤにクリア塗装の引戸がそれでです。

奥天神の家 勝手口
右は網戸を開けた状態。網戸を閉めれば見えなくなる勝手口ドア自体は気密性とコストバランスを考え安価なアルミサッシ框戸を採用・・・それができるのもこの手法のメリット。

一般的に勝手口はあまり覗かれたくもない場所ですから、このスリット式の網戸だと半目隠しにもなって一石二鳥。また、ドアを開け放って網戸だけ閉めている際に他所に居ても大丈夫なように、室内から施錠できる鎌錠も取り付けてあります。

奥天神の家 寝室で、目隠しと言えば遮光・・・って、ちょっとつながりが苦しですが。(^^;
<奥天神の家 I>にはそんな遮光についての一工夫もあります。

これもちょくちょくいただくお話ですが、寝室は寝ている間は朝でも遮光して暗くしておきたい、というご要望で、この住宅もまた然り。
でも、住まい手はカーテンやベネシャンブラインドがお嫌で、なおかつ、この寝室の窓はこの住宅で最も眺望の利く開口なのでコーナー出窓にしてワイドに風景を切り取りたい=雨戸は付けられないし、遮光シャッターも難しい。
そんな時の一工夫が襖による遮光。
まあ、左の写真をご覧いただければ一目瞭然ですね。
壁の薄塗り漆喰にほぼ近い白の揉み紙を使った枠無し襖(坊主襖)でシンプルに納めています。

また、時に住宅設計では遮光とは反対に漏れる光もまた重要。
部屋から漏れてくる光でそこに家族の気配を感じることができますし、もっと単純に電気の消し忘れがわかったりもします。
下の写真はそんな漏れる光の演出の一つ、<富田の家 II>のトイレ引戸に施した光の漏れる引手です。

富田の家 2 トイレ引戸
引戸の鎌錠(表示錠)はうちの定番、ATOM:KL30 先述の網戸の鎌錠も同じシリーズ

この引戸は戸袋内への引込み戸のため付框(※図面下キャプション参照)納まりとなっていますが、その引手部分を貫通穴にして乳白アクリル板を仕込んだだけのなんて事ないディテール。
でも、建具のアクセントにもなってなかなか良いものです。

付框詳細図
引手納まり詳細図
付框: 引込み戸の戸尻(引込み側)に呑込みを付けるためのもの。付框を付けない状態で建具を吊り込み、その後、戸頭に框をビス止めする事で呑込み代を作る引込み戸の定番ディテール。


このようになんだかんだと設計ごと現場ごとに、住まい手のご要望や私たちのこだわり、また時に切羽詰った上での瓢箪から駒だったりもしますが、そんなところから様々な工夫を考え、それを(スチール製建具などに比べれば)安価に実現できる点が「木建」の楽しいところ&住宅設計の醍醐味でもあるわけですが、最後に<加西の家>での工夫をご紹介してお開きにします。

<加西の家>のアプローチには下写真のように酒樽に使われていた杉板を再利用した板塀を配して、それを室内まで連続させる事で、外から内へ、内から外へと繋がる空間演出しています。
※なぜ酒樽杉材を再利用しているかは、下記ウェブサイトの「仕事の記憶 加西の家」ページをご覧下さい。
http://www.kenchikusha.com/history/kasai.html


加西の家 玄関
玄関ドアも酒樽杉材仕上

ただ、このように連続した壁面を計画しようとした際に問題になったのが玄関収納。
プランの制約上、反対側の壁に収納を設ける事は難しい・・・そこで施した工夫が、壁と同じ酒樽杉材で建具を設え収納を隠すディテール。

加西の家 下足箱扉左写真のようにこの壁には天井いっぱいで幅約2.5mの収納が隠されていますが、扉を閉じてさえいればアプローチからの連続感を損なわないデザインに仕立てる事ができました。

ただ、これはさすがに安価な木建とは言えず。(^^;
普通に無垢板張りの建具というだけでも壁と仕上げを合わせる事はなかなか難しい事なのに、酒樽の杉板はなにせ古材。
腐っている部分もあってそれを有効に使おうとすると幅だけでなく長さも乱取りになり結果縦横に矧がねばならず・・・まあ、とんでもない手間になってしまいました。(^^;
いま振り返ってみても工務店&建具屋さんもよくやってくれたと思いますが、まあ、お値段もそれなりになってしまった・・・そんな木建工事ではありました。
でも、そのお陰で唯一無二、この住まいならではのエントランス空間が生まれ、何より住まい手が喜ばれているのが印象的でした。

以上、長々と木建について綴ってきましたが(ここからはまた宣伝になりますが)今度、見学会を開く<急傾斜地の家>でもここで紹介した工夫の内の幾つかや、さらに新しい工夫を施した木建なども設えています。
見るだけでなく、実際に触れて動かせもするこの機会。ご興味があれば見学会に来てみて下さい!

おまけ
そうそう<小曽根の家>ではこんな事もやっています。↓
仕事の記憶 小曽根の家: http://www.kenchikusha.com/history/ozone.html
上のリンク先ページの下の方「20031028 完成見学会報告」の記事参照・・・入隅を回る明かり障子です。



急傾斜地の家 完成見学会
参加者募集中です。
開催日:2007年12月22日(土)・23日(日)
場所:兵庫県西宮市
詳しくは下記リンクをご覧下さい。皆様からのご参加申込みをお待ちしております。
http://blog.kenchikusha.com/archives/50395803.html


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