2005年07月18日

映画と原作

0102
近畿地方の梅雨明けが発表され、祇園祭の山鉾巡行も終ってこれからが夏本番。今年もどうやら暑い夏になりそうですね。
さてそんな話とは何の関係もなく(^^;、今回は映画<宇宙戦争>の話。
物語についてかなり突っ込んで触れているので、これから観るのを楽しみにしている方は読んだら観る気が失せるかも、と一応お断りして話を進めて行きましょう。

ここ数年「スピルバーグが撮るSF映画はどうもなぁー」と思っていて、観ようかどうか迷いましたが、熱血科学少年としてはやはり観るべきか、という半分義務のような感じで観てしまいました。(^^)
で、結果はやっぱり「スピルバーグが撮るSF映画はどうもなぁー」(^^;
H・G・ウェルズの原作<The War of the Worlds>が、火星人の侵略という全地球的な主題にもかかわらず、主人公である「私」が見聞きした出来事だけの狭い世界を描かく事で、危機感や恐怖感をリアリティのあるものにしていた事に創意を得たのか、父親としてはまったくダメオヤジな人間が地球外知的生命の侵略という危機に直面し、子供を連れて逃げ惑う中で父親としての自覚に目覚め、子供からの信頼も得て人間として成長して行くという原作にはない脚色は、同じような年頃の娘を持つオヤジとして身につまされる思いもないではなく、わからないでもない設定とも思えましたが、でもこのような父子物語なら、なにも地球侵略というような大舞台を用意して莫大な製作費とエネルギーを浪費しなくとも描けるじゃないか、と醒めてしまったというのが正直な感想。
ある意味スピルバーグほどのSFファンが、地球侵略系SFとしては最初で最後とも言っていいほどの不朽の名作を、こんな描き方しかでしか表現できないのかいうような極めつけのガッカリ感を味あわされたようで・・・。
もしかして、自分が本当に撮りたい映画の資金を稼ぐため映画だったのか・・・と。

舞台を現代に置き換えたにも係わらず、エンディングを原作そのままに描いてしまった点もどうしようもなくガッカリなところ。
というわけで、ここからはラストシーンに関する話題。読みたい方だけ続きをどうぞ。
人間には無害な自然界のウイルスによって宇宙からの侵略者は自滅する。
いま読めば「えっ、それで終り」というような原作のエンディングを、舞台を現代に置き換えた時にどうリアリティのあるエンディングに仕立てるのかが見所、と思って観にいったところもあったのに、原作そのままに侵略者は無防備にも裸?で地球上をうろつきウイルスに感染して自滅してしまう。
おいおい、いくらなんでもそりゃないやろスピルバーグはん・・・という感じ。
まして原作の火星人とは違い、映画の地球外知的生命は、地球人が文明を興す以前から戦闘メカ<トライポッド>を地中に埋めておくという、とてつもない長い時間をかけて地球侵略を準備してきたような超慎重派。
そんな侵略者が、なんで自分たちを全滅させるほどのウイルスの存在に無防備であったのか、あまりにリアリティに欠けていて、映画館の椅子の上で思わずスベッてしまいました。

原作<The War of the Worlds>がイギリスで発表されたのは1898年。
19世紀末のロンドンといえば<切り裂きジャック>事件に恐怖し<エレファントマン>が生き、シャーロック・ホームスが活躍した時代。
アジアやアフリカの植民地を巡ってヨーロッパ各国は戦争を繰り返し、建築や芸術にも世紀末特有の終末感が覆う中、結核や天然痘、コレラやマラリヤ熱など様々な細菌やウイルスによる伝染病死が人類の死因の多くを占めていた時代。
方や科学の分野では、X線や放射能の発見、電子の存在確認や後にアインシュタインの相対性理論の基礎となる光速度不変も発見され、巷では火星大接近に伴って火星に運河が発見されたとの風評が飛び交い、正誤真偽はあれど科学や宇宙への関心が高まっていた時代でもありました。
その時代にH・G・ウェルズが生みだした<The War of the Worlds>は、火星人に代表される地球外への向けての人々の関心と戦争行為への警鐘を主題として、エンディングを未知のウイルスの存在で締めくくるという、まさに時代の世界観を反映した小説として不朽の名作となりました。
SF小説としてはさすがに色褪せた今でも、その時代のイギリスやロンドンに思いを馳せながら読むことで、19世紀末の空気を感じることができる小説として存分に楽しめる逸品です。

なので、原作を知らずに映画<宇宙戦争>を見てガッカリした方も、この原作は一読の価値大いに有り、です。
ぜひどうぞ。たとえエンディングを知ってしまった今であっても。
Posted by masai at 23:14Comments(2)TrackBack(1)熱血科学少年 

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スピルバーグ監督でダコタ・ファニング主演,おっと,トム・クルーズ主演の「宇宙戦争」
今としては,もうちょっとヒネリが欲しい「宇宙戦争」【まわりぶろぐ】at 2005年07月19日 11:46
この記事へのコメント
スピルバーグのSFは相性の良し悪しがありますね。私自身、「ET」と「未知との遭遇」は、あれほどヒットしたにもかかわらず、良さがいまいちわからないです。ちなみにハリウッド映画にストーリーの詰めの甘さを追及するのは無駄です。もう突っ込みだすとキリがないです。
我が家は親子4人でスターウォーズIII見てきました。映画館で質問されないよう、子供らには事前講義を行い、人間関係を叩き込んで備えましたが、隣に座ったヨソの子供はレクチャーを受けていなかったらしく、皇帝を指差して「この人が、ダースベーダーになるん?」と親に質問。「勉強してから来んかい!」と頭をはたきたくなりました。忍・・・。
Posted by かま猫 at 2005年07月21日 00:26
ハリウッド映画の中にも、なかなかと感じる脚本の映画もないではないですが、まあ多数決ならそうでしょうね。
先日も<バットマン ビギンズ>を見て、水を気化させる敵の兵器がなんで体重の70%が水の人間には作用しないのか・・・ちょっと醒めてしまった。(^^)
まあ、それ以外は予想以上に楽しめましたが。

熱血スターウォーズ物語については、また後日記事にする予定です。
お楽しみに。
Posted by masai at 2005年07月21日 09:36