2005年07月11日

天空率

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天空率計算 部分街中を歩いていると、よくファサードの頭の方が斜めにカットされたビルを見かけますよね。
ある海外の建築家が日本を訪れた際、あまりにその斜めカットが目に付くので「これは日本の新しいモダンスタイルなのか」と尋ねたという話を聞いた事がありますが、この斜めカットはほとんど場合、意図されたデザインではなく、道路斜線という建築基準法による建築制限のために生まれてしまったデザインでしかありません。

建築物はその敷地が面する道路の向い側の道路境界線からある一定の角度で引いた斜線を超えてはならない、というのが道路斜線による建築制限で、建築基準法では他にも隣地斜線や北側斜線など、似たような斜線による建築制限が設けられています。
本来は道路幅に合わせて建築物の高さを制限しようする法律でしたが、斜線での制限である以上、壁を斜めにすればより高く=容積を稼ぐ建物を建てることができるので、地価高騰に伴う土地利用効率の向上という要求の下、建築デザイン上ほとんど意味のない「頭斜めカット」ビルが乱立するようになったわけです。
1980年代後半に入ってからは様々な緩和規定が設けられるようになり、そのようなヘンなデザインの建物が減ってきたとはいえ、現在でも斜線による建築制限が設けられていることにはかわりなく、いまでも「頭斜めカット」ビルは街のそこここで建てられています。

そんな中、2003年からはその斜線による制限に換えて、<天空率>というものを計算してその値が基準値以下なら斜線を越えて建築物を建てても良いという条文が新たに付け加えられました。
敷地が面する道路の向い側の境界線上から見て、計画建物の見付け面積が全天空に占める割合を<天空率>と呼び、その面積が仮に斜線制限いっぱいに建てた場合の面積より小さければ道路斜線を超えて建てても良い、というのが法律の内容です。
なので、敷地の間口に対して目いっぱい建てない場合だとか、道路から見て建物の一部が斜線制限による高さ限度よりかなり低く建てられている場合などでは、<天空率>を計算して計画した方が高い建物が建てられる可能性も出てくるようになったわけです。
隣地斜線に対して置き換えることももちろん可能で、要するに、いままでの斜線による高さ制限が地面から見た空の広さを2次元的に規制するものであったのに対して、<天空率>による制限は3次元的に規制するものと言えるわけです。

ふーッ、ここまでこの冗長な文章に付いて来ていただけましたでしょうか。イラストもないし分かり難いですよね。たぶん。
そんな方は下記サイトをどうぞ、と言って自分の文章の拙さを投げる。(^^;
http://www.tokyo.epcot.co.jp/semi3/

天空率計算さてここからが今日の本題です。(^^;
ブログで度々紹介している<牧落の家>は主となる地盤面が道路から5m以上高く、地上2階・地下2階建てとは言え道路から見ればかなりの高さの建物になってしまいます。
様々な緩和規定を駆使しても軒先は道路斜線を超えてしまい、制限内に収めようとすればデザイン意図もなにもない「頭斜めカット」をしなければなりません。
幸い敷地の間口に対して建物の幅は4分の1程度しかない計画ですので、これは<天空率>しかないだろうと言う事で、うちの事務所ではじめての「天空率物件」となりました。
計算や役所との協議はスタッフ井上に任せているので、私自身詳しい事はわかりませんが、これがなかなかに大変だった様子。
パソコン+CADなら簡単に計算結果が出るのだろうと思っていたら、敷地が矩形で道路との高低差もなく、道路が一直線なら簡単なようですが、<牧落の家>は高低差がある上に、敷地も裏が広い扇形、さらに加えて道路は緩やかなカーブ、と全ての要素が計算方法がややこしくなる方向に向かっている計画条件。
なにせ井上から聞いたところによれば、箕面市の担当官もこんな複雑な要素が絡み合う敷地で<天空率>による申請を受け付けるのは初めてという事で、どんな計算結果を添付してもらえれば審査できるか悩み、挙句、CADデータをそのままファイルで添付してほしいなどと言われたという話。
まあ、計算する側にしろ審査する側にしろ従来の2次元的思考を3次元的思考に転換するのは大変なのだろうな、と傍から見ていて思った次第でした。
この敷地の場合<天空率>の計算ポイントは道路に沿って11ヶ所になるようですが、井上の連夜の悪戦苦闘の結果、いずれのポイントでも計画建物(図中 上段青色)は斜線制限いっぱいに建てた場合(図中 下段緑色)の<天空率>を上回り、無事計算は完了。
「頭斜めカット」などという不合理なデザインとならない理想に近いファサードを決定することができました。
よかった、よかった。(^^)

しかしこの<天空率>に限らず、毎年のように変わっていく法律に頭を対応させて行くのが、歳とともに年々難しくなって行くような・・・(^^;
法規を満足させる建築物を建てることが建築士としての職能の根幹とは言え、なかなかにたいへんです。
その意味でも若い頭を持つスタッフの存在は不可欠・・・と感じた先週の出来事でした。

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この記事へのコメント
慣れない法規とCADの操作に若い(のかなぁ…)頭といえども、結構な疲労度が…。
法規だけではなく日々更新されてゆく情報を把握するのは、たいへんだなぁと痛感する毎日です(-〜-)
Posted by inoue at 2005年07月11日 18:15
計画建物(図中 上段青色)の天空図では地盤が考慮されていますが、斜線制限いっぱいに建てた場合(図中 下段緑色)では考慮されていませんね。
まずいのではないでしょうか?
Posted by BOY at 2006年09月23日 01:38
この敷地は敷地高低差が3m以上のため、計算の基となる平均地盤面も複数出てきます。拡大図はその抜粋で、この測定点では地盤面の変化が考慮されていないように見えますが、もちろん、ちゃんと考慮しております・・・でないと確認申請・完了検査も通りません。
Posted by masai at 2006年09月25日 10:36